不動産に関わる税金
不動産に関わる税金はいくつかありますが、それぞれによって納付の基準も様々です。ここでは、売却の際に必要な税金(譲渡所得税)、贈与の際に必要な税金(贈与税)、所有するだけで必要な税金(固定資産税)についてわかりやすく解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税は分離課税と呼ばれ、特定の所得に対して独立した算出方法で課税額が決まります。不動産を売却した際に得た所得は譲渡所得税に該当します。譲渡所得の課税額は下記の金額を用いて算出します。
●譲渡価額 … 不動産の売却金額
●取得費用 … 不動産の購入代金、購入手数料など
●譲渡費用 … 仲介手数料、印紙税、解体費用など
算出方法
●譲渡価額 -(取得費用 + 譲渡費用)- 特別控除 = 譲渡所得金額
長期譲渡所得(所有期間5年超)
●所得税 … 15%
●住民税 … 5%
短期譲渡所得(所有期間5年以下)
●所得税 … 30%
●住民税 … 9%
ポイント
①物件を買った金額より売った金額の方が低い場合、譲渡して得た所得がないので課税されません。
②物件を買った金額が不明、領収書がなく取得費が不明の場合、譲渡価額の5%が計算されます。
③相続した物件の場合、所有期間も引き継ぎます。
復興特別所得税
2037年まで復興特別所得税として所得税額の2.1%分の納付が義務づけられています。
●復興税 … 60万円 × 2.1% = 1万2600円
●所得税 … 400万円 × 15% = 60万円
●住民税 … 400万円 × 5% = 20万円
●納付額 … 81万2600円
贈与税
不動産を相続した際に気になるのが相続税の納付額。一定の相続財産額を超えなければ課税されないため、100人中4人程度であると財務省も試算しています。
これが平成27年1月1日に相続税の税制が改定され、負担額が2倍近く引き上がったことで、100人中6人が関わってくるとされています。そこで、注目されたのが贈与契約による生前贈与を活用した節税です。平成25年に贈与税率の緩和がなされましたが、本当にこの生前贈与で節税できるのでしょうか?
生前贈与
生きている内に財産を贈与することを指しています。眠らせている財産を生きてる間に贈与することで、有効活用することができるだけでなく、相続での争いを未然に防ぐ観点でも有用とされています。
一般贈与
税金が掛からない範囲で贈与をおこなう方法です。贈与税の基礎控除は1年あたり110万円となっています。そのため、110万円を超える贈与額については、基礎控除額を差し引いた贈与額によって、税率と控除額が変わりますので下記をご参考ください。
20歳以上の子や孫への贈与税率
※贈与額から基礎控除の110万円を引いた額
●200万円以下 … 税率10%、控除額なし
●400万円以下 … 税率15%、控除額10万円
●600万円以下 … 税率20%、控除額30万円
●1000万円以下 … 税率30%、控除額90万円
●1500万円以下 … 税率40%、控除額190万円
●3000万円以下 … 税率45%、控除額256万円
●4500万円以下 … 税率50%、控除額415万円
●4501万円以上 … 税率55%、控除額640万円
一般的な贈与税率
※贈与額から基礎控除の110万円を引いた額
●200万円以下 … 税率10%、控除額なし
●400万円以下 … 税率15%、控除額10万円
●600万円以下 … 税率20%、控除額25万円
●1000万円以下 … 税率30%、控除額65万円
●1500万円以下 … 税率40%、控除額125万円
●3000万円以下 … 税率45%、控除額175万円
●4500万円以下 … 税率50%、控除額250万円
●4501万円以上 … 税率55%、控除額400万円
節税をすることはできますが、仮に2500万円の不動産を売却して、一般贈与の控除額内(110万円)で贈与をおこなった場合、単純計算で約23年間を要します。贈与税も相続税も負担することなく財産を移せますが、相当な時間を要することがわかります。
また、毎年一定額を贈与するなど明らかに節税のためと判断されるような贈与計画の場合、当初から総額分の贈与をおこなう意思があったとみなされ、総額に対して贈与税を課せられてしまう場合もあり、結果的に相続税よりも高額の負担となります。基礎控除の範囲内であっても、毎年一定額を贈与する「定期贈与」は避けたほうが無難といえるでしょう。
固定資産税
毎年1月1日時点、登記簿謄本上に土地建物の所有者として登記されているものに対して課税される市町村民税のことです。
固定資産税の税率
固定資産税の税率は一律、課税標準額に対して1.4%となります。固定資産税の計算の際のポイントは、実際の購入価格ではなく「固定資産課税標準額」という独自の評価額を計算に用いる点です。
固定資産税の評価額
固定資産課税標準額とは、「総務大臣が定める固定資産課税標準基準」に則って査定された資産の評価額のことです。この価格は、固定資産課税台帳という台帳に登録された価格のことで、これが課税標準額となります。
住宅用地のように課税標準の特例措置が適用される場合や、土地についての負担調整措置が適用される場合などは、この課税標準額は実際の売買価格よりも低く算定されることとなります。なお、3年毎に評価替えがおこなわれており、査定された固定資産税標準額は、その後3年間にわたり適用されます。
住宅用地の軽減税率の適用条件
居住目的の不動産の場合、土地に対し下記範囲にて軽減税率の適用が受けられます。
●床面積が200㎡以下の場合、軽減率は6分の1
●床面積が201㎡以上の場合、軽減率は3分の1
新築住宅の軽減税率の適用条件
新築で住宅を購入する場合、以下の条件の範囲にて軽減税率の適用が受けられます。
●耐火構造で床面積が200㎡以下の場合、5年間は軽減率は2分の1
●一般住宅で床面積が200㎡以下の場合、3年間は軽減率は2分の1
所有者変更の固定資産税
固定資産税納税義務者は、原則として1月1日時点で登記簿謄本上、または固定資産税台帳の所有者となっている者に、固定資産税の納税義務が生じます。
例えば、新しく不動産を購入したとしても、1月1日時点でその土地の所有者が売主の名義であった場合、売り主が固定資産税の納税義務者となります。実際の売買では、所有者の移転の日を基準とし日割りで固定資産税を計算して、売り主・買い主が所有権を保有している日数分を双方で負担し、売り主が一括して納税するパターンが大半です。
都市計画税とは、都市計画区域内の1月1日時点での不動産の所有者(固定資産税課税台帳に登録されている人)に課税される市町村税で、固定資産税と一括して納税します。
都市計画税の税率
都市計画税の税率は、課税標準額に対して0.3%となります。こちらも固定資産税と同様「課税標準額」を計算に用います。
住宅用地の軽減税率の適用条件
居住目的の不動産の場合、以下の条件の範囲にて軽減税率の適用が受けられます。
●床面積が200㎡以下の場合、軽減率は3分の1
●床面積が201㎡以上の場合、軽減率は3分の2
遊休地の活用
「土地を持っていれば儲かる」時代は終わり、不動産は所有価値から利用価値へ変わってきています。
不動産を放置しておくデメリット
例えば固定資産税評価額2000万円の土地(更地)を所有している場合
●固定資産税 … 2000万円 × 1.4% = 28万円
●都市計画税 … 2000万円 × 0.3% = 6万円
毎年1.7%の金利(税金)を市町村に支払わなければなりません。30年間そのまま放置しておけば累積税額は1020万円。土地を遊ばせているだけでは何も意味がないどころか1020万円のマイナスになります。
不動産を遊休地にするのは勿体ない
相続した空き家や遊休地になっている不動産は早めに売却したほうがいいケースがほとんどです。不動産は所有しているだけで固定資産税が発生します。毎年無駄な税金を払うくらいなら売却するのが得策かもしれません。